仕事のための仕事ではなく、この会社で働くことで何を得るか? シオノ鋳工は、いつもこのことを考えています。自分たちの存在意義を掘り下げ、喜びの意味を知り、辿り着いた1つの結論は、「人として成長することこそ、人間の幸福」だということです。
鋳物製造の技術、仕事のスピード、お客様へのご要望にお応えすること。どれもとても大切です。しかし、ただ仕事をこなすだけでいいのか?シオノはただ鋳物を造るだけの会社だろうか? 私たちが目指す会社の在り方は、ここで働くことで人として成長し、社会の要となる人財に育つような場であることです。
弊社は天保年間(1830年)に創業し、伝統ある「鋳物」という業界で事業を続けて参りました。しかし昨今では人口減少や海外での生産などにより、鋳物業界全体が縮小傾向にあります。
そんな中、私たちが掲げているビジョンは「100年後も成幸であり続ける」というものです。これまで200年近く続いてきた弊社の歴史が途絶えることなく、かつ時代の流れに飲み込まれることもなく、私たちにとって「続ける」ということは、単に経営を続けるという事以上に深い意味があります。そして100年後は今とは全く異なるメンバーで事業を続けていることでしょう。その時、成長こそ人の幸せだと感じる社員が、シオノの歴史を紡ぎ続けているはずです。
シオノ鋳工は2016年、これまでのCIを刷新し、経営理念・ビジョンに基づいた企業イメージでのリブランディングを行いました。ロゴマークには人づくりを中心とするシオノの信念を意味付けし、ビジョン達成に向けて挑戦し続ける思いを込めています。
「会社がより成長していくためにも全員で共有できる明確な基準が欲しい」
弊社代表取締役の塩野にこのような思いが芽生えた頃、シオノ鋳工の新たな一歩に向けた取り組みが始まりました。それまで明確に成文化されていなかった経営理念・ビジョン・行動指針を策定する取り組みです。
2014年4月から始まった経営理念策定のプロジェクトには、塩野を始め、幹部である吉野工場長、中尾営業部長、そして一般社員から2名を募って5名での検討委員会を設けました。定期的にミーティングを行い、自分たちがこの会社で働く意味、過去繰り返し取り組んできたこと、仕事の上でどうしても譲れない姿勢など、あらゆる角度から考え抜き、分析してきました。しかし、それでもやはり明確な答えには辿りつけない日々が続き…。
経営理念といった漠然とした概念を具体化するのは非常に困難を極めました。しかし不思議なことに、ある日突然、考えぬいたことが腑に落ちる瞬間がやってきます。過去、無意識のうちにやってきたことを掘り下げる中で、塩野が突如思い出した言葉、それが「日々挑戦」でした。塩野自身の姿勢を表した言葉です。この言葉に委員会メンバーも納得。これこそが自分たちに流れている共通の価値観だと気付きました。
しかし、それと同時にメンバーにある違和感が芽生えました。「理念を固定化するということは、より高いベストを追求することと矛盾するのでは?」経営理念の固定化は、挑戦し続ける姿勢と矛盾するのではないか?という観点です。しかしこれは「常にベストを追求する、という姿勢こそが大切な姿勢なのではないか」という考えにたどり着きます。
このような過程を経てメンバーは、「日々挑戦」という姿勢が自分たちの根本理念であると発見しました。
「日々挑戦」は弊社の姿勢として重要なキーワードでした。しかし、経営理念は「経営を行う目的」である必要があります。
このため、メンバーは「経営理念は事業目的や社会的価値を含んだ言葉にするべき」、という命題を掲げ、「日々挑戦」の概念をもとに、試行錯誤を繰り返しました。「自分たちは何に挑戦し続けるのか?」「自分たちが考える幸せとは何か?」を全社員にインタビューするなどの活動を行い、最終的に経営理念「要(かなめ)」というフレーズに辿りつきました。
ある社員は、この言葉を誰に指示されるでもなく、自問していたと言います。
この自問は、人に成長をもたらすことになります。成長とは、苦しいことでしょうか?もしかしたらそうかもしれません。
しかし、ある一定の自分を超えると、不思議なことに「成長することの楽しさ、面白さ、幸福感」を覚えるようになります。これこそが、成長が幸せ=成幸です。
私たちはこれからも、社会の要となれるような人間に成長し、成幸者であり続けることを念頭に掲げ、日々挑戦を繰り返していきたいと思います。